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「お姉さん、結構お酒飲んでる? まだ飲めたりする?」
少年の面影を残すその男子は、パーカーの襟を抜いて、細身のジーンズを着ていた。すらりとした高い背丈に、とてもあっている。顔も目と鼻立ちがはっきりしていて、韓国の男子ユニットにでもいそうな綺麗な顔立ちだった。梨子は
「まだ、飲みたい。だからこれからドンキ行ってお酒買ってくるの」
言って、またひっくとしゃっくりをすると、またその男子は笑った。
「じゃあさ。俺と飲まない? 俺、ホストなんだけど、すぐそばでやってて、初めてだったら、二時間三千円で飲み放題だけど。どう?」
言うと、そのホストは、名刺を渡してきた。そこには、「Club JUJU カズ」と書かれていた。
「カズ……」
ぼそりと梨子は零した。それもそうだ、カズ、という名前は、先月別れた一樹と同じ、「カズ」という名前だったからだ。梨子も一樹のことを「カズ」と呼んでいた。
それを口にしたら、梨子はなんだか泣けてきてしまった。ぽろぽろと涙を流す梨子を見て、カズは
「大丈夫!? なんか俺、した!? ごめん!」
言うと、梨子の顔を心配そうにのぞき込むカズ。
梨子はホストクラブなんか行ったことが無かった。でも、目の前にいる、自分のタイプの優しいカズを見て、どうせ飲むなら二時間三千円で飲めるわけだし、この際、付いて行ってしまおう、そう決めた。もう、どうにでもなれ、それが梨子の今の心境だった。
「じゃあ、行く。お酒、もっと飲んで嫌なこと忘れる」
言うと、カズは、優しく手を取ると、梨子は、胸がどきん、と跳ねた。
「じゃあ、少し歩くけど、こっちだよ」
言って、二人は繁華街の中へと入って行った。
これが梨子の大きな恋愛事情を変える一歩になったのだった。
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