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インカムを付けたホストが店内に梨子を通す。店内は暗くて、青色で統一されており、壁は鏡張りになっている。キラキラとミラーボールが輝いていて、酔っている梨子は目がチカチカする。
それから角の席に通されると、梨子はそのソファに座った。真っ黒な革製のソファーだ。とても座り心地が良い。背をもたれたらそのまま眠りについてしまいそうだ。
それからホストがお絞りを持ってくると、説明をし始めた。
「本日はどうも、JUJUにご来店、ありがとうございます。ご新規様は二時間三千円ぽっきりでやってますので、どうぞ、ご安心下さい。あと、飲み物も飲み放題なのですが、何になされますか?」
言って、「FREE DRINK」と書かれたメニューをホストが開けた。
「じゃあ、ビール。ビールがいい」
梨子が言うと、「かしこまりました」と、お辞儀してホストがその場を立った。
梨子はそのままじっとして周りを見渡した。自分と同じくらいより若い女の子たちが、高そうなお酒をテーブルの上に置いていたり、お気に入りのホストだと思しき男を傍においたりして、イチャイチャと談笑している。その喧騒の中、梨子はカズが来るのを待った。
しばらくして、先にビールが運ばれてきた。瓶ビールで、そのビールグラスにホストがビールを注ぐと、梨子の前にコースターを敷いてその上に丁寧にグラスを置いた。そのホストがそのまま、
「あ、初めまして。僕、ジュンっていいます。カズくんが来るまでご一緒いいですか?」
言って、ジュンは笑った。ジュンは、真っ黒な細身のスーツに、黒いシャツを着て、ブランドもののネクタイを締めていた。会社では絶対見ないタイプのスーツの着こなし。髪型もきっちりセットされていて、とても上品に見える。ジュンだけじゃない、さっきエスコートしてくれたホストも、ホールにいるホストも、全員高そうなスーツを着ている。梨子は単純に思ったことを口にした。
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