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「ねえ、ホストってそんなにも稼げるの?」
言うと、梨子はグラスを持ってビールを口に運んだ。ジュンはおどけたように笑って、
「まあ、ホストっていうくらいですからね。ナンバー入りしている人はかなり稼いでいますよ。ホスト初めてなんですか?」
「うん」
梨子が率直に伝えると、ジュンはまた笑って、
「そうなんですね。カズくんと来たから、もしかしたら前のお客さんかなって思いましたよ」
「前のお客さん?」
梨子が言うと、ジュンは、慌てて、
「あ、いや。何も知らなかったんですね。カズくん、JUJUに入る前、他のホストでナンバーワンだったんですよ」
「へえ……」
梨子はそう聞いて、カズはそんなに人気があることに驚いた。でも、あのルックスだ。確かにモテそうではある。そう思って、ジュンに、
「なら、カズのお客さんも今いるの?」
言うと、ジュンは店を見渡して、
「あー……。今はリコさんだけですね」
「へえ……」
言うと、梨子のグラスがなくなったのを見ると、ジュンはビールを注いだ。
すると、
「ごめんね、待った?」
言って、白いスーツを着たカズがやって来た。シャツも白くて、ネクタイはグレーを付けていた。
梨子はその凛とした姿に、見とれた。化粧もしていないのに、どうしてこんなに美しい顔立ちになるんだろう。まだ年端もいかない若い男なのに、色気がすごくある。さっきはしなかったムスクの匂いがする。
「ジュンさん、ありがとうございます。あ、ビール、もう一本お願いします」
言うと、ジュンは一礼して、その場を離れた。
「ごめんね、待った? って聞いてるんだけど」
と、カズはいたずらに笑う。暗がりでしかも、爆音で音楽が鳴っているから、耳に息がかかるくらいの距離で梨子に言う。梨子は右耳がくすぐったい。肩を少し揺らすと、
「待ってないよ。カズって、カッコイイね」
梨子が言うと、カズは今度は明るく笑った。
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