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「...実は僕この間、玩具屋さんの前で久米さんが、ガチャを真剣な顔で回してるのを見ちゃったんですよね。」
その言葉に驚き、ビクンと僕の肩が揺れた。
あれを、見られていたのか。
大の男が、真剣にガチャってるところを見られるだなんて。
...引かれてるんだろうな、きっと。
そう思ったのに彼は予想に反し、思わぬ告白をしてきた。
「それでもしかしたら、お仲間かなと思って、気になっていて。
...釣らせて頂きました。」
にんまりと悪戯っ子みたいに、彼は笑った。
「...そうなんだ?」
キーホルダーは、僕を釣る為の餌で。
...僕はまんまとその餌に、食い付いたって訳か。
クスクスとおみくんは可笑しそうになおも笑い、一方の僕はきっと、苦虫を噛み潰したみたいな顔をしているに違いない。
「ここ数日の間、僕の事を見てたのもおみくん?」
じっと瞳を見つめ、聞いた。
彼はちょっとバツが悪そうに頭をポリポリと掻き、苦笑いを浮かべた。
「...すみません、話しかけるタイミングをはかっていて。」
その言葉を聞き、しかめっ面なんてモノは一瞬のうちに吹き飛んでしまって。
...今度は僕が、噴き出した。
おみくんは一瞬だけ、キョトンとした感じで僕を見て、それから顔を見合わせ、二人、大笑いした。
大人っぽい見た目に反し、この人はどうやらかなりの悪戯好きらしい。
でもこれまで、この手の話題についてこられる知り合いは居なかったから、すごく嬉しい。
笑い過ぎて溢れてきた涙を指先で拭い、僕は言った。
「これからも、よろしくお願いします。」
おみくんもニコッと笑い、答えてくれた。
「はい。
こちらこそよろしくお願いします。」
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