トナリノトナリ

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「最近眠れねぇんだよ、隣の隣がうるさくて」 そう訴えかけるツレを俺の下宿アパートに一晩泊める事にした。大学生の分際なんで安い缶チューハイをちびちびやりながら、話を切り出す。 「隣の隣ってお前、錯覚じゃねぇの?」 「なんで」 「お前の部屋の並びって二部屋しかねぇじゃん、隣の隣はないだろ?」 「いやだから隣の、隣なんだって」 「分かんねぇな」 「じゃあ明日ゼミ終わったら来てくれよ」 「おう、隣の隣なんてねぇだろ?」 「あるんだよ、だから」 翌夕方、ツレのアパートの部屋に同行した。 ガタガタ、ガタ、ピシッ。ガタ、ガタガタガタ。 「ああ又始まった」 「隣の隣なんて、やっぱりないって、さっき俺確認したけど」 「だから、隣だよ」 「隣の隣じゃなかったのか?」 「戸が鳴ってんだよ、一晩中」 「隣の、戸鳴り、か?」 「おう、ウチの実家も風が吹っ晒しでさぁ、よく戸鳴りがすんだよな」 「戸鳴り、だったのかよ」 「ああ紛らわしかったか?それにしても何で隣だけドアから雨戸から戸って云う戸が鳴りっぱなしなんだか、一部屋だけ風が当たるって事ないだろうがよ?」 俺はツレに即刻、アパートの管理人に連絡するよう告げ、もう一晩俺の下宿に来いと云った。 あれから一ヶ月。 心中したと見られる幼子と若夫婦の遺体が見つかったツレの隣室は封鎖されたままで、ツレは部屋を引き払ったものの気を病んで実家に帰っている。 ガタガタ、ガタ、ピシッ。 俺の下宿も旧いから仕方がないのか、俺の部屋も何故か最近雨戸や扉がよく、突然鳴り出すようになった。 ガタ、ガッ、ガタガタ。ガタガタ。 ガタガタ。ピシッ。 ―――ピシッ。 終
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