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「あぁ、弟に聞いた…それで確かめに行った。パン屋で働く君は昔のように、楽しそうに笑っていた…君が笑わなくなったのは、俺のせいだと分かっている」
彼の吐き出された言葉の後に、私を抱きしめる腕に力がこもった。
「アラン殿下、私は大丈夫ですわ。殿下が思う人の所へと、行ってください」
私は自分の腕に力を入れ、彼の胸を押し、彼の腕から離れた…
「俺は…」
私を見つめる、彼の瞳が揺れていた…
「シャルがいい、君が好きなんだ…弟に言われた、兄貴は本当は誰が好きなのかと…シャルの事がいらないんなら、俺がもらって幸せにすると」
だから、あの子と所へと、行けばいいと…
「兄貴は行けばいい…しかし今日シャルの手を離したら、後悔しても、二度と彼女は手に入らないと、言われた」
そう…私はあなたに婚約破棄されたら…前から練習していた馬に跨って、この国を離れ、二度とここには戻ることはない…
「嫌だシャル。パン屋で君が見せた笑顔を俺にも見せて、俺から離れないでくれ…」
彼の声が震た…
「アラン殿下…」
「シャル…」
「私の側にいてくれるの?あの子の所には行かない?」
「ああ…行かない」
ほんと?
心が揺れる…あなたを信じたいけど…
「でもあなたは行ったじゃない…彼女が泣いた時…私を置いて…あの子の所に駆け寄ったわ…私…寂しいのは嫌なの…」
彼の目が、大きく開かれ、私を力強く抱きしめた。
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