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「お前、いい顔してんな」
「え、顔?」
数分前にはさっきの面接官に、自信のなさそうな顔だと評された、その顔だ。
「女ウケしそうっていうか。こういう害のなさそうな顔が、いかにも今風だよな」
「はあ……」
彫刻にでもなったような気分になる。
僕の頬をひと撫でし、相楽さんは続ける。
「就職先。ひとつだけいいところを知ってる。テンクーデザイン。アートディレクター・相楽天の事務所だ」
「えっ……さがらてん?」
脳内で、音が漢字に変換された。
「本当にあなたが、あの相楽天なんですか?」
相楽という苗字を耳にした時から、もしかしてとは思っていた。
けれどこんな場所で出会えるなんて、心の準備ができていなかった。
「相楽って苗字はそう多くないだろ。天なんて名前も珍しいし」
「マジですか……」
素でつぶやき、目の前の彼の顔を見つめる。
僕が相楽天の名前を知ったのは、2年前に開催されたウェセックスオリンピックの時だった。
あの時、聖火とそれに伸ばす手をかたどった、オリンピックロゴが話題を呼んでいた。
パッと見た時の色や形はシンプルでポップだけれど、それを描く線は大胆で力強い。
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