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2章:紫色のチェ・ゲバラTシャツ
今日は土曜日。
溜まった洗濯物を洗濯機に放り込み、部屋に敷きっぱなしだった布団を干す。
そしてベランダから戻ると、10畳はある広いリビングのあちこちに、脱いだままのTシャツや靴下が散らばっているのに気づいた。
(いま洗濯機まわしたところなのに、これも洗濯しなきゃか……)
言うまでもなく、散らかっているのは僕ではなく相楽さんの衣類だ。
ここへ住むようになって1カ月。
彼の自堕落な生活ぶりには驚かされてばかりだった。
服は基本的に脱ぎっぱなし、使った食器も洗わない。
リビングや風呂場などの共用部分は当然として、彼の部屋の掃除まで僕が見かねてやる始末だ。
自分としても居候の身で何かしなきゃという気持ちがあり……。
そんなこんなで僕はいつの間にか、この家のハウスキーパーみたいな役回りになっていた。
リビングに散らばった衣類を拾い集めていると、相楽さんが欠伸しながらやってくる。
「おはようミズキ、いい朝だな」
「いい朝じゃありませんよ。どうしてこんなに次から次へと脱いだ服が出てくるんですか」
ソファの隙間に挟まった靴下を引っ張りだしてそれを睨む。
「せめて洗濯機に入れておいてくれたら、僕もこうやって宝探しをしなくて済むのに……」
「悪い……」
ペットボトルの水に口をつけながら、相楽さんが珍しく謝罪の言葉を口にした。
仕事の時の自信満々な彼はどこへやら。
今は寝癖頭で顔にシーツのあとをつけ、途方にくれたような顔をしている。
「今まで、どうやって暮らしてたんですか。僕が来るまでは……」
純粋な疑問として聞くと、相楽さんは寝癖頭を掻き回す。
「何カ月か前までは、今ミズキが使ってる部屋に女が住んでたんだけど」
「えっ、彼女なんていたんですか!?」
思わず、洗濯物を探す手が止まった。
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