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「ふぅ。至福だわぁ」
夜ご飯を食べ終わった後、新しく届いたグラスでホットコーヒーと板チョコをかじりながら私がつぶやく。
「ほんとコーヒー飲んでるとき幸せそうだよなぁ。俺には苦みしか感じられないけどな」
彼はレモンサワーの二杯目を作りながら言う。
「私、レモンサワーやだ。おっさんみたい」
笑いながら私が言うと彼はじーっとこっちを見た。
「そのグラス見つけてやったの誰かなー、口当たりがよくて耐熱でガラスのコップでしかコーヒーは飲みたくないだなんて我が儘に対応してあげたのは。ちなみにレモンサワーは流行りだぞ、おばちゃん」
「むきー!おばちゃん言うな!ガキが」
「ガキとはなんだ、ガキとは。グラスばかり割るくせに」
「・・・。さすがです、私の好みをすべてかなえてくれる救世主です」
しょぼんとした私の頭を優しく撫でてくれる手。この手が大好きだ。
お揃いのグラスで私はホットコーヒー、彼はレモンサワー、ホットとアイス両方に対応したグラスでふたりは和む。一日の疲れが飛ぶ瞬間。
此処が、私の、いる場所。
彼が、横に、いる場所。
気づけば私はいつものようにリビングのソファで布団をかけられて寝ていた。
そう、膝枕をしてもらったまま寝入ってしまっていたから。
それが、いつものことだ。
それを、望んだのは、私だ。
もう今日を過去にはしない。ずっと続く、一本道のふたりだけのストーリー。
彼は知っている。
私が隠した過去を。
もう過去に変えた、想い、を。
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