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湯気のたつマグカップを差し出すように笑うあの人の笑顔。
たった一枚の写真。
何年も共にいたのに他には一枚もない、たった一枚の写真。
捨てられない、捨てられない、捨てられない。
その写真を見ながら泣いていた私に彼は言った。
「大切なものはひとつじゃなくていいんだよ」
泣きじゃくる私の頭をずっと撫でてくれた夜。
彼はいつも私の頭を撫でてくれる。
「マグカップはうちに置くの、止めとこうな」
彼は言った。
代わりに耐熱のグラスを探してくれた。
今の私に必要なのは、心地よいのは、耐熱グラスだ。マグカップじゃない。
そう、私は、彼を、慕う。
マグカップの向こう側で揺れるあの人よ。
元気にしてますか?
私は今、幸せです。
どうか、どうか、あなたも幸せでありますように。
私の青春を埋めたあなた。
私は彼との一本道を見失わぬように生きるよ。
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