非凡な日の始まり

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店を出ると、 「西 徹だな!」という声と共に右横から唐突に走ってきた男がいた。 走ってきた男の手には、ぎらりと光るものが握られていた。 驚いて口を押さえた玲子の前で、西が男の方へ向かい体を低くして、男の動きより数段速い動きでまわりこみ、素早く男の脇腹へ拳を一発めり込ませた。 「ぐっ!」 一瞬ひるんだものの男は、がむしゃらに刃物を振り回して来た。西のコートの袖が切れて、血が飛び散った。 「くそったれ!」 西が雄叫びみたいに声を上げた。 ざざっと、音がして左側からもチンピラ風の男が1人現れた。 眉毛のない男は、震える手で刃物をにぎって突っ立っていた。 右の男を相手していた西は、この状況に舌打ちしながら、羽織っていたコートを右の男に被せた。すぐに両手で拳を作り、頭上に拳を思い切り落とした。 「ぐぇっ!」 呻いて動きの止まりかけた男の腕を掴んで西は、膝蹴りを腹に入れた。連発で男のこめかみを殴りつけ、男が地面にへたり込んだ所、待っていたかのように顔を蹴り上げた。 左の男が、やっと意を決したように玲子の前を通って西の背中に走りかけていた。
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