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電話は、智也からだった。
「あ、電話遠いか? もう一回言うよ。今、玲子のマンションの下に来てるんだ。ほら、スマホ無いと不便だろ。だから、昨日のうちに徹に会って受け取ってきたから」
二度同じ事を智也に言わせてしまった。
掛け布団をはいで、玲子は自分の格好を見おろした。
ーーー今? マンションの下に? 智也が来てる? ど、どうしよう。
玲子は、ベッドから出ると鏡の前に立った。
ーーーウソっ! ノーブラだし、スッピンだし、グレーの上下スウェットだし!
一気に血の気が失せていた。
ーーー大好きな智也に、何が悲しくてスッピンを見せられるだろうか。かといって、ポストに入れて帰ってくれ。なんて非情なことは、言えない。
鏡の前に玲子は仁王立ちになって耳に子機を当てたまま、こわばり続けていた。
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