『君』

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『君』

君の願いごとは ずっと前から分かってたよ 僕とずっと 一緒に。 寒い日は僕のカイロ手に取り 震える指先で笑って見せた 暑い日は僕の冷たい手を取り 汗だくの瞳で笑って見せた 君がいるなら 二人ならば 一緒にずっとずっといられるなら 大丈夫だね、ってあんな弱い言葉 世界中のどこにもないと思う たとえばもしもこの先 何万年か経って 人類が消えたとしよう そして僕は君のことを忘れているだろう だけど、 二人の 思い出は残ってて 名も顔も忘れた君を 思い出したいな なんて、ただの、 僕のつまらない我儘だよ 気にしないで 嬉しい日は僕の手を握って 心から弾けて笑って見せた 辛い日も僕の手を握って おいてかないで、と嗤って見せた 僕がいるなら 二人ならば 一緒にもっともっといられるなら 大丈夫だね、ってあんな酷い言葉 世界中のどこにもないと思う たとえばもしもこの先 何万年か過ぎて 君も僕も消えたとしよう そして君は僕のことを忘れているだろう だけど、 二人の 想いは残ってて お互いに忘れ去った君を 想っていたいな なんて、ただの、 僕のくだらない冗談だよ 気にしないで 「たとえばもしもこの先  何億年か経って この地球(ほし)が消えたとしよう  そして君も僕のことを忘れているだろう  だけど、  独りの  寂しさは染みついて  名も顔も忘れた君と 一緒に居たいな」 なんて、ただの、 君のつまらない我儘だよ 気にするよ だって たとえばもしもこの先 何年か経って この身体(ぼく)が死んだとしよう そして君は僕のことを忘れるだろう だけど、 僕の 寂しさは遺ってて 生まれ変わっても 憶えているよ なんて、ただの、 僕のバレバレな嘘だよ 気にしてよ 二人なら、きっと、 君となら、もっと、 これからも、ずっと、 僕は大丈夫 って、 あんな    い言葉 宇宙中のどこにもないと思う たとえばもしもこの先 僕が死んで君も消えて 二人の想いも絶えたとしよう だけど、 だから、 僕の命は遺ってて 君の命も残ってて また 巡り合えたらいいよね 「死んでも忘れない 忘れるもんか」 「何度生まれ変わっても 憶えているよ」 なんて、ただの、 僕の叶わない夢だよ ……気づいてよ 君とならきっと、 必ずきっと、 また僕らきっと、 「出逢えるよね」 だから、もう僕は 大丈夫だね、ってあんな 怖い 痛い 辛い 脆い 嫌い あんな 君となら大丈夫だよ、ってあんな あんな 酷い(うれしい)言葉 宇宙全部どこ探したってないと思う 君が居てくれてよかったよ、 忘れないで 憶えてるから 忘れないで 全部憶えてて また会おう、笑おう、話そう、 ふざけよう、サボろう、ボケよう 歌おう、踊ろう、歩こう、 転ぼう、遊ぼう、忘れよう、 生きよう。 二人なら、 一緒なら、 生きていけるよきっと、たぶん 大丈夫だね。
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