双魚宮

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双魚宮

誰かがノートの端に 落書きをした人魚姫 いつの間にか黒いマジックで ぐちゃぐちゃに塗りつぶされている ああ、嬉しくなんかないよ 誰かが海の底に 行きたいなと通った砂浜 いつの間にか誰も来なくなって 錆びつき枯れ果ててしまった ああ、楽しくなんかないよ 一つ誰かが呼びだすたびに 誰も彼も吐いて捨てては あるわけがないと否定する 音楽鳴り響く海の中のお城も 言葉を話す魚たちも 荒んだ心を潤す水だとか 私のことも 見ないフリしないでほしいの 指さして嗤わないでほしいの ここに居るよ バカげた妄想なんて言わないで 私はちゃんと(ここ)にいるよ ちゃんと見てよ 皆で朝まで 歌って繋がって一日過ごそう 五線譜じゃ全然足りないよ 八本くらい線引こう 線と線の間には 七つの色を塗って空へ架けよう 見ようとする人がいなくても 見てほしいな 独りじゃないよ。 寂しくはないよ。 魚たちと歌い踊って たくさん笑って 海を駆けて遊んですごしてるから 澄んだ水が私の傍に 一緒に居て 優しい言葉をくれるから 寂しくはないよ。 ただ、少しだけ 嫌になっているだけ 拝啓、僕から私へ 元気に楽しくしてますか? 友達はできましたか? なかなか会えなくてごめんね 拝啓、私から僕へ 元気だし毎日楽しいよ できたよ、もう独りじゃないよ 平気だよ寂しくないから 一つ誰かが呼びだすたびに 心の底で吐いて捨てては 我慢しなさいと押し殺す 音楽鳴り響いてた賑やかなお城も 陽が沈むまで話したことも 会いたいと思う心だとか 君のことも 見ないフリしなきゃいけないの 嗤って殺さなきゃいけないの どこにも居ないよ ただのワガママだから無理 人を困らせるだけの感情だから もう見ないよ 二人で朝まで 歌って繋がって過ごしたかった だけど今はまだ 逢えないから欲を言っちゃダメ もう少しあと少しだけ 我慢すればいいんだ 毎日会いたいなんて願い 馬鹿じゃないの? 独りじゃないよ。 毎日楽しいよ。 魚たちと歌い踊って たくさん笑って 優しい水に浸って たくさん夢見て 寂しくはないよ。 ただ、少しだけ 独りと一人は違うよねって 思っちゃっただけで。 寂しくはないよ。嘘だよ ほんとは会いたいんだよ 一年に一度だけだとか 誰が決めたんだっけな 足りるわけないじゃん 毎日でも話したい、なんてね 独りじゃなかったけど私は ずっとずっとこの海の底 一人だったんだよ 毎日楽しいんだよ。それはほんとだよ 寂しくはないよ。それもほんとだよ 君がいさえすれば 寂しくはないよ。 次会えるまであと何日だろう 見ないフリしないんだね 知ってたけどやっぱ嬉しいな 君が居るよ 馬鹿げた妄想なんて言わずに 君は私の(ここ)に居る ちゃんと見たい 二人で夜まで ただ隣に座って一緒に過ごそう 五線譜じゃ全然足りないよ 八本くらい線引こう 七色に色づいた 虹の橋を渡って空へ駆けよう 見ようとする人がいなくても 見てほしいな ああ、見てくれてる、うん知ってる 僕はいつも私を見てたよね 誰よりも近く 誰よりも遠い場所から ずっと 時間の流れの違う私 誰かが気味悪がっても 見た目が全然違う私 誰かが遠ざけても 馬鹿な妄想だった私 誰かが否定しても (きみ)はずっとずっとずっと 空と海が重なり繋がる 空の果て、海の底 水平線が消える 境界線が消える ああ、今年もやっと逢えた (ふた)りの魚 空と海に懸ける想い 暮らす同じ星の中 居場所も同じ ずっと 君が・・・ ねえ、来年は毎日会えるかな? 「また明日」
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