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金牛宮
黄金色に鳴り響く
いつかこの背に誰かをのせて
強く強く願うばかり
守れなかった幸せを
弱く細く歩くばかり
何も出来ずにうずくまる
痛い苦しい辛い怖い
毎日怖えて強がった
痛い苦しい辛い怖い
毎日抱えて強ばった
いつのまにか独り悲しい
一頭の牡牛がいたのです
響く鳴き声 誰にも届かず
空を切ったその先で
大切な人は笑っていた
響く泣き声 誰にも聴こえず
宙に浮いたその先で
大切な人は行ってしまう
いつかこの背に誰かを乗せて
二人でなら全部乗り越えて
大切な人がまだ笑っている
未来が死んでしまっても
大切な人を守り抜ける
夢が死んでしまっても
神様はとても理不尽で
神様はいつも不公平で
神様はひどく意地悪だ
神様は優しいと信じても
また嘘がやまない
神様は正しいと信じても
まだ痛みが抜けない
神様を信じようと信じても
もう君は其処にいなかった
いつのまにか独り残され
暗がりに牡牛がいたのです
響く亡き声 誰かが嗤い
空を蹴ったその先で
大切な人は見えなくなった
響く無き声 誰にも聞こえない
宙に消えたその先で
大切な人は叫んでいた
「いきなさい」とさけんでいた
行きたくない 行けるわけがない
泣きながらそんなこと言われたって
離れたくなかったのです
よく連れてきたと誰かが言った
珍しい牛だと誰かが言った
貴方を乗せるに相応しい牛ですと誰かが言って
装飾をつけられた背に誰かが乗った
愛想笑う誰かの声
気に入ったと背中から声
一頭の牡牛はこの瞬間
ただの移動手段になった
金の装飾も銀の鞍も
金の瞳も銀の蹄も
金の牛舎も豪華な餌も
偉い人を背に乗せる名誉も
何も何も要らなかった
全部全部いらなかった
ただ ただ ただ
また二人でのんびり畦道でも歩いて
畑で汗拭い作業して
笑いあって暮らしたかった
別れたくなかった 行きたくなかった
なのにどうして行きなさいと
ああそうか 違うな
「行きなさい」ではなかったんだ
もう逢えない誰かが叫んでいる
記憶の中で泣きながら笑い
また逢いたい誰かが叫んでいる
響く無き声 牡牛には聴こえた
大切な人の命令が
黄金色に鳴り響く
いつかこの背に貴方を乗せて
「生きなさい」
そして必ず
また逢おう。
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