ひだりどなり

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左利きのあいつの左隣は俺の定位置で。 少しでも近くに居たくて、ふとした瞬間や偶然の触れ合いに期待して俺はいつだってここにいる。 翔太(しょうた)は同じ大学の同級生で、学部もサークルも同じだったりして、実は小学校からの幼なじみだったりする。まさか大学まで同じ所に行く事になろうとは思いもしなかった。俺にとっては嬉しい誤算だったけれど。 もう何年一緒にいるんだろう……あと何年一緒にいられるんだろう……。 大学の帰りにはいつも馴染みのラーメン屋に寄って、どうでもいい話をするっていうのが俺たちのおきまりのパターンだった。いつものように翔太が座ってから俺は奴の左隣に座る。 「だーかーらー!!!何でおまえはいつもこっちに座るんだよ?食べにくいだろーが!」 「え?あぁ、そうだった。いつも忘れるんだよなー。まぁいいじゃん。もう慣れただろ?」 なんて嘘ぶくのもそろそろ限界なのかもしれない。ヘラヘラ笑いながら言う俺を翔太はいたずらに睨んで見せて、俺の右肩に自分の左肩をわざと当ててから割り箸を手に取った。 こういう些細な、なんて事ないやり取りが俺にとってどれだけ幸せかなんてこいつは知る由もない。 「あー。美味かった。マジで美味いよな。あそこの味噌ラーメン。」 「うん。美味いな。醤油ラーメン。」 「いやいや味噌だろ?おまえ味噌食った事ある?一回食ってみな!ぜってぇ味噌が一番だってなるから!」 「翔太こそ。醤油ラーメン一回食ってみろよ。」 「いーや!味噌だ!あそこは絶対味噌!!!」 俺より頭一個分背の低い翔太の茶色い短髪の奥につむじが見える。俺はこのつむじが好きで、いつもあーだこーだ身振り手振りで熱くラーメンを語る翔太を適当にあしらってはこのつむじばかりを見ている。触ってみたいなーとか思いながら。怒られそうだからしないけど。
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