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「無理して笑ってんじゃねーよ。嫌なら嫌だってはっきり言わなきゃわかんねぇだろ?」
そんな正論を振りかざすヒーローみたいな翔太が初めは苦手だった。いつも明るくて、面白くてクラスの人気者の奴なんかに俺の気持ちなんてわかんねぇだろって。
だけど、ある日見てしまった……翔太が泣いている所を。
今でも理由はわからない。けれど夕日に染まる公園の滑り台の下に隠れて声を押し殺すように泣いていた翔太を放っておけなかった。
そっと翔太の隣に座って何も言わずに暗くなるまでずっとただそこに居た。
その時からかな。翔太を守りたいって思ったのは。あいつの隣に居たいと思うようになったのは。今思えば、きっとあれが恋の始まりだったんだと思う。
「おい!なぁ、聞いてる?」
「え?……あ、ごめん。聞いてない。」
「聞いてないじゃねーだろ!ほんっとおまえはいつまで経っても……。まぁいいや。取り敢えず明日一緒にサークルに顔出すぞ!いいな?」
「んー……。嫌だなぁ。」
「おまえ、そういうのは口に出さなくていいんだよ。」
翔太は飽きれ顔で、けれど優しく笑ってそう言って、じゃぁな。って手を振って帰って行った。
「嫌なら嫌だって言えって言ったのおまえだろ……。」
俺は小さくなる背中に向かって呟くように言葉を吐いた。
次の日、俺は約束通り翔太に連れられて仕方なくサークルに顔を出した。
「お!来たな!あの子だよあの子!めちゃくちゃ美人だろ?」
俺たちの顔を見るなり四ノ宮は意気揚々とそう言って、嬉しそうに一方を指さした。
俺は指さされた方を見る翔太を見ていた。
胸がきゅっと締め付けられて痛い。今までだって何度も経験した痛みな筈なのに、この痛みだけには一向に慣れない。
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