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帰り道、黙って歩く翔太に向かって自分から口を開いた。翔太の口から聞くよりは幾分マシだと思ったから。
「可愛かったな。あの子。」
「……そうかぁ?おまえあーゆー感じがタイプなの?」
「別に。そんなんじゃないけど。翔太は?」
「俺も別に!全然!俺はもっとこう……まぁいいや。ラーメン食いに行こうぜ。」
「うん。」
俯きながらそう答え、歩き出そうとした所で、不意に前髪に手が触れた。俺は驚いて顔をあげるとそこには翔太の顔があって、俺の額に触れる手があって、どうしていいのかわからなくて思わずその手を払ってしまった。
「あ、ごめん……。」
「いや、何か元気ないような気がしてさ、熱でもあんじゃねーかって。俺こそごめん。びっくりしたよな?」
「いや……。」
「顔赤いぞ?本当に熱あんじゃねーの?」
「そう……かも。頭痛いような気もするし。ごめん、今日は帰るわ。」
大丈夫か?という翔太の声が耳を掠めたけれど、その声を振り切ってとにかく歩いた。一刻も早く翔太から離れたいと思った。自分の想いがバレてしまうような気がして。
その後、俺は本当に熱を出してしまった。翔太からは毎日のようにLINEが届いていたけれど、何となく返信出来ないでいた。
「お!来たな~!風邪大丈夫か?」
「うん。ごめんな、LINE返さなくて。」
「いいって。熱出してたんだし。」
昼飯のサンドイッチを食べながら翔太は笑ってそう言った。普段は食わないようなアボカドとかトマトが入ってるシャレたやつ。いつもは焼きそばパンばっか食ってるくせに。
翔太の傍には、四ノ宮が騒いでいためちゃくちゃ可愛いくて美人らしいあの子がいた。何故か、翔太と同じシャレたサンドイッチを手に持ってそこにいた。
「翔太さん、今日って暇な時間ありますか?」
「ん?あぁ……。」
彼女は俺なんてまるで目に入っていないかのように翔太だけを見てそう言った。翔太は少し気まづそうに返事をしつつ、俺の顔をチラリと見やった後で言葉を返した。
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