ひだりどなり

8/9
前へ
/9ページ
次へ
「悪りぃ。悪りぃ。新歓コンパの打ち合わせが長引いちゃって。」 「何だそれ?打ち合わせなんて必要なの?」 「四ノ宮が色々うるせーんだよ。ほら、あいつまた彼女に振られたからさ。」 「新歓コンパ……行くの?」 「え?そりゃぁ一応さ……何だよ?心配なの?もしかして妬いてたりして?」 「うん。心配だし妬いてる。行って欲しくないけど仕方ないから、大人しく帰ってくるの待ってるよ。」 「ちょ、……あぁもう……おまえさ、あ、いや、遥希(はるき)……。」 自分で言ったくせにそうやって照れるの何なの?わざとなの?ってくらいに照れてる翔太はめちゃくちゃ可愛い。照れるとすぐに耳が赤くなるのは最近発見した事だ。 ___ 告白した日の夜、翔太からLINEが送られてきた。今から会える?って。 心臓がドクリと鳴って、その後深い溜め息が溢れ落ちた。 何を言われるかなんてだいたいの察しは付く。 翔太は優しいから、「おまえの気持ちには答えられないけどこれからも友達でいよう。」とか、そんなありふれた慰めの言葉くらいはくれるかもしれない。 それで十分だ。きっともう友達には戻れないけど。戻るつもりもないけれど。 夜の公園で、あの日の滑り台の前で、翔太はもぞもぞと落ち着かない様子でそこに居た。そして俺の顔を見るなり大きく息を吐いたと思ったら、 「正直めちゃくちゃ驚いた。まさかって思った。マジかって思った。いや、本当にマジで……。」 と早口でそう言って、もう一度、今度は小さく息を吐いた後で、 「それで……俺も……好きだと思う……多分、遥希の事。」 と呟やくようにそう言った。遥希だなんて初めて呼ばれた。いつもは おまえ とか、 なぁ! とか、そんなのだったから。 心臓が止まるかと思った。思ってもみない答えに驚き過ぎて、暫くそこに突っ立ったまま動けなかった。翔太が泣いていたあの日みたいに。 「マジ……?」 沈黙の後で何とかそう言葉を吐き出す俺に翔太は笑って、マネすんなよ。って言った。 公園からの帰り道、真剣な顔して、時折ひどく照れながら翔太は話し始めた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加