消えよ青春

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ああ、確かに、彼女はいつも隣にいた。 呼び起こす記憶のほとんどに、彼女の横顔があるという事実。それほど共にしているなら思い起こさなくとも分かることだと思うが、恥ずかしながら、私はつい先程気が付いたのだ。 〝わたしの成長記録〟などと題したアルバムを作れば、その写真の大半に彼女が一緒に載るのも不思議ではないだろう。実際、そうであった。 家に帰り、衝動的に戸の滑りの悪い押し入れを漁ると、埃をかぶった我が人生の記録のアルバムが出てくる。埃も払わずに、パラパラとページをめくっていく。 赤ん坊の時期はただ私が可愛らしかった頃が映るだけで、彼女の断片すらないが、三歳くらいになると小さな女の子がちらほらと一緒に現れた。 アルバムは十三歳辺りで終わっていたが、幼稚園も小学校も中学校も、入学式・卒業式の写真には必ず彼女が映っているのだ。さらに家族ぐるみでの旅行や学校の行事の一枚にしても、これまた同じだった。 これでは彼女なしに私を語ることは出来ないではないか。そのことにどこか腑に落ちない私がいたが、同時に〝初恋の人が自身の人生に深く関わっていた〟というぐっと胸に来る喜びも、私は感じていた。     
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