消えよ青春

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消えよ青春

我が人生、〝都会への脱出〟が主題であると言っても過言ではない。 人生を語れるほどの歳も重ねてはいないし、堂々と話せる学問知識や、他者と差をつける程の経験を積んでいる訳でもない。そう、私はまだピチピチの未熟な高校生。恋も恥じらう乙男(おとお)なのだ。 まぁ、ただその〝都会への執着〟をエネルギーに、今日までを全力で生きてきたということは、胸を張って言えるだろう。いや、そうでもないか。しかし、この乙男がここまで言うのにはちゃんとした理由がある。 というのも、生まれ育った故郷は近年増加している超過疎地域に属し、山間部に位置する故に都市化計画や土地開拓計画からも弾かれるという救いようのない、田舎中の田舎だからだ。全く何も無いという事でもないが、スーパーや雑貨店、お情け程度の電気チェーン店など、どこに行ってもある面々が無表情に建ち並ぶだけである。 故郷での日常を繰り返していくうちに、私は気付いてしまった。 〝ここでどう最期まで生きてゆけというのだろう〟と。 このままでは将来の夢と希望もどこかへ消え去り、見失ってしまう。この歳頃の理想や好奇心を満たすには少々刺激に欠けたのだと、私は遂に思い至った。 辺りを囲むのも山、山、山。山だけにもう腹は沢山。十数年も惰性と平凡の集合体のようなこの町に晒されていれば、都会への憧れを持つのは考えなくとも普通のことではないだろうか?
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