哀しい記憶。

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 部屋を出たマオ。開いた扉の向こうに、リンと共に立ち竦むユキの姿に驚いたマオは早々に部屋の扉を閉めた。何故、此処にと。 「マオの処に連れて行ってくれって、あんまり必死に言われてさ」  マオが問う筈であった事に、透かさず答えを与えたリン。声を飲み込み、眉間へと皺を寄せるマオの表情からは、其れでも此処へは、連れて来て欲しくなかったと語っている様だ。誰かを罰した己の姿等、ユキには見られたく無い。 「マオ……何、してたんですか……?」  恐る恐る訊ねるユキ。マオは、答えを躊躇うが。 「……仕事だ」  静かに出た返答。ユキは俯き、其れ以上の追及が出来ない。レイの事は語らなかったが、レイは大丈夫なのか。声に出来ない、そんな不安があるものの。気まずい沈黙の中、徐に口を開くマオ。 「ユキ、部屋へ戻ろう。話がある」 「あ、はい……」  緊張しつつも、頷いたユキを促したマオは、リンへ顔を向けた。 「済まぬ」  其の一言は、様々な思いが込められたものであった。リンには、分かっている。苦笑いを浮かべ頷く事が全てを理解した合図。僅かに、口の端を緩めたマオは衣の袖を優雅に翻し、ユキを連れその場より姿を消したのだった。
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