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「そ、そうなんだ……でも、元気だしさ。もう良いよ、俺は」
鱗があった腕を見せて笑う。そんなユキをマオは、呆然と見詰めていたが、軈て震え出す肩。思わず、其のまま抱き締めて。其れがあまりに強く、きつく抱き締められるもので、ユキは少々苦しさも感じた程。
「やはり、魂は其のままだ……」
掠れる、マオの声。
「え……」
「汝の魂は、ずっと覚えてくれている……私が、教えた事を」
掠れながらも、紡がれた言葉にユキは只目を丸くさせる。
「え……何を?」
「友を、尊べと……私が、一番に教えた事を……こんなに、苦しめられても汝は……忘れておらぬと、言うのか……」
震えるマオの腕。遠い記憶にもあった、不安を覚える程に素直で純真な心。其れはずっと、其のままなのだと。
「マオ……?泣いてるの……?」
ユキは只、思うままに言葉を発しただけ。ユキは、幼い頃から何時も輪の中にいられた。とても心地好くて、楽しくて。ずっと大切にしたいと思うもの。幼馴染みのタクや、多くの友人。家族。だが其れは、マオが其の魂へ教えた心だった。ユキが、人の世で多くの人に愛される様に、と。
「マオ、泣かないでくれよ。俺、本当に大丈夫だから……レイに、会わせて欲しいな」
マオへ笑うユキ。眩しい其の笑顔にマオは、浮かんだ涙を軽く拭う。そして、己も微笑んだ。
「ああ……汝が、望むのならば」
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