名実ともに。

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 ユキの進言により、取り敢えず解放されたレイ。只、最終判断は黒龍が決める事となった。マオの伴侶である、ユキを陥れた事は、黒龍への侮辱に繋がる行為であるからだ。此れは、マオの一存で決められる一件であるが、マオの選択でとなるならば一択でしかない。其れは、ユキの望まぬ選択であるからだ。其処でマオは、黒龍へ裁定を委ねた。此れは、ユキの進言によるマオの精一杯の譲歩だ。黒龍であるならば、又違った答えを出してくれるやも知れない。一応は、ユキの願いを伝えて。  暗い黒龍の部屋。其の玉座前にて、頭を打ち付け拜をするレイの体は、小刻みに震えている。 「――黒龍様、罪人を連れて参りました」  マオが、レイの横でそう述べる。暗い部屋に響く、強くも静かな声。掌を美しく前へ重ね、直立する半身を倒し拝する姿。マオの拝により、其の玉座が目映い程の光に包まれた。光の中に姿を表したのは、艶やかな漆黒の龍。黒龍である。黒龍は、龍の姿のまま恐怖で震えるレイを暫し見詰め、重く唸るような息を吐いた。再び、強い光を放った黒龍は、人の形となる。黒龍は、気だるげに玉座へと腰を下ろした。肘を付き、足を組む姿。其の美麗な容顔に浮かぶ感情は、決して良いものでは無い。 「餓鬼、顔を上げろ」
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