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美しく静かな声だというのに、更に震えが酷くなるレイ。頭上に、途轍もない威圧感が漂うのだ。レイは怯えながらも、命じられたままに顔を上げた。目の前に在る黒龍の姿。優美な漆黒の衣に身を包み、美しく艶やかな黒髪に飾られた冠。其の容顔は、まるで女神の如く繊細な美しさ。城に仕える下級官吏の己が、目にする事等許されない其の姿に、一瞬恐怖も忘れて見惚れてしまった程。
「お前、俺を何だと思ってる」
其の声に又も大きく跳ねた体。再び額を強く床へと叩き付けた
「こ、黒龍様に背くつもりは……!」
「マオの伴侶に呪いをかけたらしいな」
レイの声、言葉は続かない。いや、続けられない。恐怖で震える全身、声の出し方さえ忘れてしまう程に。
「お前、俺を呪うと言うのか……?」
更に、追い討ちをかける黒龍の追及に、震える体を動かし、額を打ち付けるレイ。
「断じて、其の様な事は思うておりませぬ!」
「ならば、何故ユキを陥れた」
美しい瞳が、鋭く見据える。其の声も、凍る程に冷たくて。レイは、恐怖と惨めさに押し潰されそうになりながら、徐に震える唇を開いた。
「ま、マオ様のお側を、許されるのが……羨ましくて……ズーシュエは、ずっと、見て貰っていたから……っ!」
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