名実ともに。

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 偽り無い、嫉妬の念。此れは、古より培われた大蛇の心でもあった。大蛇は、様々な種族の中でも大きな力を持つ。神の側に仕え、寵を受ける地位も大蛇の中より選ばれるのだ。そんな大蛇は、他種族の中でも人を忌み嫌う。世界を壊しかねない文明を築いたからと言うのも軽蔑する要因だ。しかし、其れより大きな理由は、他種族で最も早く、大きく心を発達させた事。此の人の心は、時に神の心さえも動かせる程の大きな力であるからだ。心の奥底にある種族の呪縛、嫉妬。叶わぬマオへの思いも重なり、愚行へと至ったのだろう。憐れではある、と黒龍は思うた。  此処で、マオを一瞥する黒龍。表情を変える事無く、レイを見据える姿は冷静だ。慈悲は見えぬ。マオにとっては、其れならば更に許せぬだろうから。幼い頃より共に肩を並べて来たリンこそ、そう言った両族の歪んだ心による迫害に傷付けられてきたから。大蛇の誇りは、時に傲慢に。そして、人の心も時に卑しさで溢れる事を知っている。其れらに捕らわれた事を理由に、他を傷付ける等許せぬからだ。そう、呪いにより卑しさに捕らわれたユキはそうではなかった。此れが、ユキとレイの差であると。  深く、息を吐く黒龍。 「……お前は、俺に仕える事は最早許されん」
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