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其れは、遠い日に交わした約束だった。
「――マオ様……私、は……只、お側にいられるだけで、幸せでしたから……此れで、良い……」
苦し気に、静かにそう聞こえた声。光に包まれる青年を腕に抱いたマオと呼ばれた美しい翡翠の瞳の青年は、涙溢れる青年の顔を切なげに見詰めている。
「さよう、なら……」
其の言葉に、何かに気が付く様に口を開く青年。
「私は、必ず汝(なんじ)を再び見つけてみせる」
驚く青年。涙が一瞬止まった様で。
「え……?」
「約束しよう。其の時は、必ず汝を伴侶として迎えると……!」
其の言葉に、青年は己を抱くマオの衣の襟に、最期の力を振り絞りしがみついた。だが、青年を包む白い光は強さを増し、無情に其の身を覆い消していく。
「マオ様……嬉しい……きっ、と――」
青年の声は遂に途切れた。マオの腕の中にあった光も消え失せる。月も見えぬ暗い空からは、冷たい雪が只冷たく降り注いでいた。
――きっと。其の時こそ、永遠の愛を誓おう。
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