嘗ての思い。

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 ユキと約束を交わした土曜日。マオはリンと共に先日知ったコンビニの駐車場に佇んでいた。其の側には、一応『自動車』も無くては不自然だろうと、リンが用意したものが在った。此の人の世界で、所謂『社長』という立場の者はどの様な自動車が一般的なのかと調べる処から初め、此の自動車と言うものを持つ為に知るべき規定等も頭に入れる必要があったという。  本日も、強い日差し。神使である己等は、地の気温等に肉体を翻弄される事が無い為か、スーツを着込み、汗ひとつ無く涼しい顔をしている姿に、時折コンビニ客が視線を向けていた。其れでなくとも、色々と此の場では目立つのだろう。 「――なぁ、本当に俺行かなくて大丈夫?」  車のボンネットへ軽く腰掛け提案するリンだが。 「男二人でなんて物々しいだろう……此の件に、汝は直接関わっていない」  連れない言葉が返って来た。 「マオちゃんが心配だもの」  口元だけで笑顔を見せるリンへ、マオの口角がひきつる。 「面白がっておるだろう……」  少々、物申さねばと体をリンへと向けた次の瞬間であった。 「あの……!」  声に振り替えると、ユキが立っていた。駆けてきたのだろうか、息が上がり、頬にも赤みがさしていた。其れでも、マオへと笑顔を見せる姿。 「やぁ」  マオは表情を直し、軽く声を掛けてやる。何とも爽やかな表情だとマオを横目で見つつも、頭を下げたリン。 「社長、頃合いに御迎えにあがります」
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