嘗ての思い。

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「何だよ其れ、えらくファンタジーな夢だな。でも、覚えてるもんなんだな。俺、夢なんか忘れるし」 「其れもそうだなぁ……何か、妙にリアルな感じだったからさ、忘れられないんだよ」  懐かしい、と笑うユキ。そうだ、不思議と現実味があって。夢の中で、崖から落ちた己の体が何故か宙に浮き、とぐろを巻いた大きな蛇の体に着地した。優しく、何かに抱かれているような心地よさだった事も覚えている。ふと上を見上げると、霧の掛かった中に、光を見せた蛇の瞳。あれは、何色だったろう。そんな事をぼんやり思うユキ。 「おお、そうだ。タク、キャンプの件だけどさ、うちの親が宜しくって。食材費とか、又連絡くれよ」  耳に届いた友人の明るく楽しげな声に、ユキは我に返った。 「あ、うちも。連絡待ってるよ」  そして、ユキもタクヘ告げる。 「うちも、まだ先だけど楽しみだな」  変わった明るい話題に夢中になるユキ。しかし、先程頭へ過った過去の記憶がまだ頭の隅で消えずに残っていた。あの大蛇の瞳はと、何故か急に追及しだした己へ違和感を覚えつつ。
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