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暗く、深い深い海の底に在る黒龍の城へと戻ったマオ。此処は、北を統べる黒龍に仕える様々な種族の者が集う。皆、言葉を得た人の姿でマオを出迎えた。
「マオ様、おかえりなさいませ」
「おかえりなさいませ」
皆、マオの姿へ改まり順に厳かな礼をしていく姿。
「ああ」
静かに声を返し、広く暗い通路へ足を進める。共に神使として黒龍へ仕える相棒、リンの部屋へとやって来た。見上げる程の大きな美しい扉が、其処へと佇んだマオを迎え入れる様に開く。中へと、静かに足を進めるマオへ気が付き、振り返った青年がリンだ。射るような強くも冷たい赤い瞳が特徴の美丈夫。人の身へ変えた其の姿は、マオとは又違った美しさを持つ大蛇で、リンは人との混血児でもあるのだ。
「どうだった?」
其の一声に、頷くマオ。
「ああ。今回は、何とか避ける事が出来た」
溜め息混じりに答えたマオへ、リンの表情も神妙になる。
「何よりだ。今年は、『彼奴』が死んだ年齢を迎える年だ。今回でもかなり無茶をしたしな、再び魂の器(うつわ)を亡くす事があれば、もうお前のものには出来ないだろう……一番運命が強く左右する日は、冬だ」
リンはそう言いつつ、手に持っていた簡策を広げ目を向けている。
「やはり、そうか……今回はまだ序の口だな……何としても、ズーシュエの魂が持つ運命を今の器で変えなくてはならん」
神妙に呟くマオへ、リンが簡策を閉じつつ顔を向けた。
「俺も、手を貸す」
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