無数の星たち

4/4
前へ
/4ページ
次へ
 しかし、不謹慎だが、不思議なことに、自分が愛した本当に近しい人たちは、無事な姿で、今ここに集結している。妻、息子、娘、年老いた母親、弟と、その家族たち、それにガキの頃から一緒に悪さをしてきた親友ども、若造から自分を一人前に育て上げてくれた社長、他にも、親戚たち・・・。もちろん、この中には、家族が津波の被害に遭ったであろう人たちがいる。だから素直には喜べない。だが、そこで思い出されるのは、あの晩、枕元にいたと思われる男の言葉だ。 「死ね、死ぬなら今だ・・・」  もしも、自分の臨終が、1日でも前後にずれていたらと思うと・・・。  あの男は一体、何者だったのであろう・・・。  ここに一つ、確かなことがある。無事に生き残った人間たちにはこの先、多大なる苦難や困難、そして、義務や責任が課されるということだ。それでも互いに手を取り合って、頑張って生き抜き、人生を全うしてくれ、今、ここにいる人たちよ。今日、この日を境に、この町を見下ろす漆黒の夜空には、煌めく星の数が一気に増えることであろう。自分も微力ながら、その片隅の小さな一つとして、君たちのことを、どんな時でも見守っているから・・・  最後に、東日本大震災によって亡くなられた方々のご冥福を、改めて、お祈り申し上げます。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加