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振り返ると、射竦めるような男の視線がシャノンに向けられていた。うつむきがちなその顔の眉間に不機嫌に皺が寄っているのが窺える。
「彼女と話がしたい」
苛立たしげにそう言うと、彼は東屋から一歩踏み出して、数歩ぶん離れた位置でシャノンに向き合った。
ぞくりと肌が粟立って、シャノンは咄嗟に首を振った。レティがすぐさまその意を汲んで、シャノンの代わりに男に告げた。
「ご心配なさらなくても、このことを無闇に口外したりはしませんわ。妹の名誉のために」
レティとシャノンを見比べて、男が投げやりに笑う。
「きみたちがそうしなくとも、噂がたつ可能性があるとは考えないのか? ぼくたちの他に庭園に誰かがいたとしたら?」
「まさか……」
レティがはっと息を飲む。
「いなかったとは言い切れない。ぼくは隠れるつもりなんてなかったからね。誰かに見られていたほうが都合が良いとさえ思っていたよ。相手を間違えたことに気付くまではね」
「相手は彼女のはずだった。そう言いたいのか、アーデン?」
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