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 ラーズクリフ伯爵が憤りの滲む声で言った。一度レティを視線で指し示して、問い質すような視線をアーデンに向ける。おそらく図星だったのだろう、ア ーデンが低く唸った。 「きみの行動の是非は問うまでもない。だが、実際に名誉を傷付けてしまった以上、きみは誇りある紳士として相応の責任を取らなければならない」  伯爵が冷静に告げる。シャノンが首を傾げる間もなくレティが訝しむようにつぶやいた。 「責任ですって…?」 「結婚だよ。今夜にでもアーデンに、きみの妹との結婚を約束させれば良い。婚約者とならば親密な行為も許されるからね」  伯爵のその口振りは、自身の提案が正しいものだと信じて疑わないようだった。シャノンは驚愕した。あまりのことに言葉が出てこない。喉が渇いてからからだった。頼りになるのはレティだけだ。 「冗談でしょう?」 「本気だよ。きみはどう思う?」  改めて返答を求められて、シャノンは震え上がった。おずおずとアーデンの顔色を窺い見て、それからラーズクリフ伯爵を見上げ、やっとの思いで「いやです」と口にした。 「当然だわ。妹はたった今その男に襲われたのよ?」
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