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「冷静になって考えなさい。彼は本来誠実な男だ。友人である私が保証する。この結婚は決して悪い話ではない」  シャノンは答えられなかった。社交界のしきたりに倣うならば――感情を切り離して考えたならば、きっと伯爵が正しいのだろう。シャノンやレティが考えているよりもずっと噂のちからは恐ろしく、一度落ちた評判を取り戻すのは難しい。未婚の女性の貞操に関わる問題ではことさらに。  長い沈黙のあいだ、レティは必死に残された冷静さを掻き集めていたようだった。ややあって口を開いた彼女の声は、苦々しくはあるものの落ち着きを取り戻していた。 「手を放してください。女性の手をそのように握るだなんて、礼儀に反するはずですわ」  伯爵は一瞬目をまるくして、「すまない」と手短かに詫びると、レティの腕をそっと手放して、掠めるように指先に触れた。レティはシャノンの肩を抱き、伯爵に背を向けて、言った。 「お心遣いには感謝します。私たちを少しでも哀れに思ってくださるなら、どうぞ先ほど仰ったとおりに馬車を裏手にお回しください。……私たちを家に帰して」
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