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 シャノンは混乱していた。  動揺で乱れた思考を掻き集めて、まず、今現在、彼女のからだを捕らえている男の腕が誰のものなのか、押し付けられる熱い唇の持ち主は誰なのかを考えようとした。けれど、答えを導き出すことは不可能な気がして、すぐに別のことを考えた。  一体全体、なぜこんなことになっているのか。  シャノンは十七歳で、今シーズンに社交界デビューしたばかりだ。弁護士である父を持ち、地方都市の貧乏でも裕福でもない家庭で育った。  彼女には双子の姉がいた。今シーズンのデビュタントのなかでも一番の美人だと評判のヴァイオレットは、髪は艶やかな黒髪で、瞳は深いすみれ色。すらりと背が高く、けれども女性らしい凹凸のあるからだをしていた。ひとつひとつの細やかな仕草は洗練されており、貴族令嬢さながらの品があった。  一方で、シャノンの容姿は地味極まりない。そこらでよく見かける涅色の髪と、茶褐色の瞳。背は低く、凹凸の少ないからだをしていた。美しい双子の姉とは顔立ちもまったく似ておらず、ふたり並んで立っていてもまるで他人のようだった。
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