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シーズンがはじまってからというもの、姉妹はいつも揃って夜会を訪れた。そんななか、三度目の夜会の翌日、ヴァイオレットに手紙が届いた。
ラーズクリフ伯爵家の赤い封蝋で封されたその手紙には、姉妹が次に訪れる予定の夜会の最中、ふたりで会いたいという旨のメッセージが綴られていた。
ラーズクリフ伯爵と言えば、今シーズン社交の場に姿を見せる独身男性のなかで最も結婚したい男性と噂される人物だ。なんでも、彼は多くの領地と屋敷を所有しているだけでなく、鉄道や工場などの様々な企業を支援して、そのすべてで莫大な利益を上げているのだという。長身で体格は逞しく、琥珀色に輝く金髪とサファイアのような深い青い瞳の整った容貌をしている。ヴァイオレットにとっては間違いなく最良の結婚相手だった。
夜会当日――つまり今夜――ヴァイオレットはその誘いを受けるはずだった。ヴァイオレットは当初、ラーズクリフ伯爵の突然の親密な誘いに戸惑いを隠しきれずにいたけれど、シャノンが何度も励まして勇気付けた甲斐もあり、決心を固めたようだった。
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