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「シャノン!」
レティの声が聞こえた気がした。突然唇が解放され、シャノンは喘ぐように息を吸って目を開けた。
いつのまに雲が流れたのか、月明かりが東屋のなかを照らしている。涙に滲む視界のなかで、男がシャノンを見下ろしていた。その両目は驚愕に見開かれ、顔色はすっかり青ざめていた。
「シャノン! 返事をして!」
レティの声が真近に聞こえて、シャノンは男の肩越しにちらりと東屋の外を覗き見た。喉の奥がからからに渇いて、声を出すことができなかった。
彼女は直感した。この状況はあまりにもまずいということを。そしておそらく、その直感は正しかった。
驚きのあまり目をまんまるくして両手で口元を覆った美しい姉と、噂に違わぬ整った容姿のラーズクリフ伯爵が、庭園をおぼろげに照らす月明かりを浴びて、シャノンと彼女に伸し掛かる男を凝視していたのだから。
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