ある大会。

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「あーもう、くっそ!この坂きつすぎだろ!試合前にバテるー」 奴が文句をだらだら言いながら自転車をこぐ。もちろん私だってきつい。この坂は地区大会の競技場に向かうには避けて通れない。顧問の方針で車送迎は、禁止。 ぐるぅん、ぐるぅん。 ゆっくりと自転車は進む。いや、ゆっくりしか進めない。 「よっ!しゃぁー!あとは下りだー」 頂上まで上ったあとものすごいスピードで奴は競技場へと向かった行った。 「おーいこっちこっち、背中ゼッケンまだつけてないだろ」 奴が言う。 「よろしくー」 私も言う。そして背中ゼッケンを渡し安全ピンでユニフォームにつけてもらう。 「おっけ、ほい、俺のも」 そう言って奴は背中ゼッケンを差し出す。 「さーんきゅ、背中に刺さったらごめんね?」 笑って私が言う。 「絶対許さん、俺は県大会までいくからこれ以上は負傷する訳にはいかねぇ」 「はいはい、つけ終わったわよ、タイム、よかった方が帰り奢りね」 「よゆー、女のお前に負けるかよ」 口の端を上げてニヤリ、と笑う。 「市内大会ではマックおごってもらったから地区大会ではモスね、よろしく」 私は勝つのが当然のように言う。 「ほざいてられるのも今のうちさ」 そう言って奴は真剣な眼をグランドに向けた。
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