春のアレコレ

1/26
前へ
/701ページ
次へ

春のアレコレ

義一『えー…って事でですね、今日は”ラジオ・オーソドックス”第一回の放送だったというので、この辺で御開きとさせて頂きます』 アシスタント女性『はい!では来週からは、雑誌オーソドックスに集っていらっしゃる皆さんにもゲストに来て頂く予定になっていますので、よろしくお願いしまーす』 二人『では皆さん、良い一週間をお過ごしくださーい』 シーン… カリ…カリ…カリ… …ん?あ… 急に静かになったのでふと顔を上げると、モニターサイズに拡大していたブラウザ画面がスリープ状態になってしまっていた。 手慣れた調子でマウスを左右に振ると、スリープ状態が解けてホーム画面に戻った。 動画…と言っていいのだろう、画面下のシークバーが右端一杯に到達しており、再生が終わった事を示していた。 私は左上の”バツ印”をクリックし、ブラウザ自体を閉じて、それからパソコンの電源自体も落とした。 今日は三月の第四木曜日。夕方の自室にいる。 学園はもう春休みなので、平日だというのにこうして家でマッタリと過ごしている所だ。 因みに今何をしていたのかと言うと、義一がパーソナリティーを務めている…いや、厳密には”務めだした”ラジオ番組を聞いていたのだった。雑誌オーソドックスに出資してくれている、神谷さんの学生時代の一つ後輩だった、全国規模に展開しているビジネスホテルチェーンの創業者である西川敏文さんの提供の元で放送される、コマーシャルなどを入れると約一時間のAMラジオ番組だ。毎週土曜日の朝六時からという枠”らしい”。 これを初めて知らされた時、「義一さん、そんな休日の朝早くから、オーソドックスでやるような濃い内容の番組を流して…誰か聞く人いるの?」と思わずにやけつつツッコんでしまったが、「あはは。確かに実際どれ程の視聴者が聞いてくれるかは未知数な所ではあるんだけどねー」と、義一も自身の事だというのに、普段通りの様子で返してきたが、しかしその後でニヤッと笑いながら返してきた。 「ふふ…生ではね?」 …そう、ここでようやく、恐らく先ほどから幾つかある矛盾点の一つに答える事が出来る。 それは、何で毎週土曜日早朝に放送の番組のものを、今こうして木曜日の午後に聞いているのかという点だ。まぁこれは大した謎でも何でもない。
/701ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加