序 8月15日

5/5
前へ
/9ページ
次へ
胡乱な目をする華音に愁は所在なさげに目を泳がせる。はたしてそんなめでたそうな人間がうちのバンドにいるか、尋ねられれば疑問しかない。なにせヴィジュアル系なんて晴天の空とは無縁な連中だ、むしろ土砂降りの方が似合う。 「まあともかく、今日もよろしく」 「はいはい。よろしくね、愁さん」 行こう、と引いた扉は相変わらず重い。ろくに冷房も効いてもいないはずの通路だったが、屋内よりはいくらか温度の低い空気に少しだけ肌が粟立ったような、気がした。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加