11月24日 PM10:38

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11月24日 PM10:38

大学構内の図書館で探し人の後姿を探して利央は辺りを見渡した。最近になってようやく、彼がよく利用する書架の位置を覚えたところだ。大きな地震を何度も耐えたものの、先日の軽い地震で天井が一部崩落したせいで立ち入り禁止のロープが張られた階段からすぐ近い書架の付近にいなければ奥の閲覧スペースにいるはず。 四コマ目の講義が終わる頃に、どこにいるか尋ねたラインには一言「図書館」とだけ返ってきた。ずらりと書棚に並べられた本と幸弥はイメージがぴたりと合う。なにせ高校生の時分から彼の手にはいつも文庫本やらハードカバーの本が収まっていたのだ。落ち着きのない高校生の喧騒で満ちた教室の片隅で静かにページを捲る手先が、文字を追う視線の運び方と長い睫毛が目元に落とす影がきれいだった。 それは今も、だけれど。 一人分のスペースがしっかり隔てられた閲覧コーナーの辺りで足を止めてもう一度辺りを見回す。視界は人より広い方だったが、幸弥の姿を見つけるのは困難だった。秋の初めくらいまでだったら、鮮やかな髪色でそれと分かったのに新しい学期が始まった途端に黒髪に戻してしまったのだ。 そちらの方が見慣れていたはずなのに、あの鮮やかさが記憶から離れてくれない。冬のモノクロな景色の中にいっとう目を惹くポインセチアのような、赤色が。 机の隙間を気持ち小さい歩幅で歩いていると、裾が床すれすれのカーディガンの後姿を見つけておそるおそる注視する。足元に置かれた鞄はスタッズやらチェーンで妙にとげとげしている。この時点で半分確勝、ついでに女子高生よろしくぶら下がっているかわいらしいぬいぐるみマスコットで八割方確信を得て利央はそっと声をかける。 「あの、幸弥さん」 「……」 返ってくる答えは無し。人違いだったろうか、しかしこんなに特徴的なファッションセンスと似たような人物など学内にいるのだろうか。そんなはずはない。意を決して肩を軽く叩くと大仰に片が跳ねて、若干の緊張を含んで振り返った顔はやはり澤田幸弥その人だった。 触れた相手が利央だと認識した途端、緩慢な動作で耳元に手を持っていく。そこから伸びているコードにそういえばこの人はいつも一人の時はイヤホンをしているのだったと思い出す。どうりで声をかけても気づかないはずだ。 「なんだよお前か」 「さっきラインしたじゃん」 「あー、そっかもう四コマ終わる時間か。で、なんか用?」 分かってはいたが、少しだけ寂しいと思った。学部は同じだけれど学科は違うとなれば彼にとって自分は用がなければ話しかける必要もない、と暗に言われたようで。一応友人のくくりには入っているつもりだったのに。 「うーんと、暇かなって思って」 「まあ、暇っちゃ暇だけど。今日バイトもないし」 「じゃあさ、ちょっとスタジオ付き合ってくんない?」 スマホのスケジュール帳を見つつ答える幸弥にそう投げかけると、僅かに画面から視線を上げる。そこに含まれていたのは戸惑い、疑問、辺りだろうか。 「……え、なんで俺?」 どう答えたらいいのか迷うようなそぶりを見せながら返ってきたのはそんな答えだった。そこで利央も少し考える。まさか、疑問を持たれるとは思っていなかった。だって、今までは空いた時間があればしょっちゅう音を合わせていたのだから。そういえば、バンドが解散してからはそんな機会を持たずにいた。それがいけなかったのだろうか。 「なんでって、オレが一緒に弾いてて楽しいから?」 「へえ、そう……そっか。うん、そっか」 なにが彼の腑に落ちたのかは分からないがしきりにそんなことを呟く。思うに、幸弥は物事を深く考えすぎるきらいがある、と利央は思う。とある友人を頭が固い、とからかっていたが自分も大概だと思う。結構理由とか、相手の意図とかそういうのを気にする。 広げていたルーズリーフやらペンケースやらをしまい始めた辺り、返答は了承ということだろう。内心胸をなでおろす。あの日以来、それとは気づかせないくらいにやんわりと距離を取られていることには気づいていた。幸弥らしく巧妙に、怪しまれない程度にではあったけれど、なんとなく気づいてしまった。 一般教養をほとんど消化してしまったのだから、自然と一緒に受けるような講義はない。けれど昼や空き時間はバンドのこともあってほとんど行動を共にしていた。大義名分がなくなったから、という見方もできるだろう。けれど、ここの所それを抜きにしたって顔を合わせる頻度が減っていた。 「……どこ?本宮、それともみたけ?」 「あ、まだ空いてるか確認してないや」 「はあ?平日とはいえ夕方過ぎたらわりと混むじゃん。誘う前に抑えとけよ、もう」 呆れたように言いながらも表情は柔らかい。仕方ないなあ、と零しながら立ち上がって鞄を肩にかけると出口に向かって歩き出す背中を慌てて追いかけた。 「俺がベース取りに行ってる間に決めといてよね。空いてなかったら……まあいいや、罰は後で考えよう」 「うん、うん!探しとく」 改めて色よい返事をもらったことで、一気にテンションが分かりやすく上昇する。あまりにもはしゃいだ声が出たせいで図書館では静かに、と頬を抓られたがそんなことは全く気にもならなかった。半ば引きずられるように図書館を出て、自宅に戻る幸弥を見送って自分もギターを取りにアパートまで歩く。足取りは軽い。 晩秋の身を切るような寒ささえ気にならなかった。たしかに、幸弥はあれでいて人の誘いを断れることは少ない。自分から誘うことはない代わりに、誘われたら大体応じるタイプなのは知っているけれど、正直今日は難題だと思った。 だって幸弥はベースを諦めようとしているから。 人から聞いたわけではない、本人からはましてや。けれど薄々気づいていた。まだ襟足やら前髪は長めだけれど、今まで伸ばしていた髪をばっさり切ったり、赤から黒に戻したり。服装だってまだ確かにそこらの他の学生とは雰囲気は違っていたけれど、少しずつ趣味が変わっているように見えた。その程度でそれは推し量れるものではないだろう、しかし利央にはなんとなく幸弥の思考が読めていた。 器用に生きている、と思う。けれどあまりにも利口を求めすぎていて、辛くはないのだろうか。周りがよく見えすぎていて、自由に生きているように見えるその実は、けっこう気遣いの塊。そういうところに気がつくには、五年はじゅうぶんだった。 市内のスタジオの予約済み表示を見比べながら、頭を悩ませているのは今からすぐに入れそうなところがないということだけではない。今日はちょっとした賭けに出ようとしている。スタジオの誘いに幸弥が乗った時点で三割成功。この後は自身の腕次第。 馴染みのスタジオの一番早い空いている時間帯に予約を入れ、時間と場所を幸弥に送りながら利央は思案する。はたして、彼は自分の思惑にのってくれるのだろうか。 結局落ち合ったのは夜も大分更けた頃。別れたのが夕方近くだったのを考えると、ずいぶん待たされたものである。それでも了承した手前、行かないというのも決まり悪い。見切り発車を重ねまくった利央が悪いのだけれど、誘われるとどうにも断る気にはなれなかった。 高校の同級生、ちょっと前まで一緒にバンドをやっていた。一時の気の迷いで爛れた関係にもなったりしたが今は学科も違う、接点なんてその程度のはずなのに声をかけてくれたのが嬉しくて。あいつは楽器も扱っているCDショップでアルバイトをしていたはずだから、他にも音を合わせるのに誘ってもいい相手なんかたくさんいたはずだ。けれど、利央は幸弥にしか声をかける気はないと言う。それに恋愛的な下心があるのは分かっているけれど、まだ自分たちにそういう健全なつながりがあって少し安心したのだ。多分、自分は彼とは普通に、友人のままでいたいのだと思う。 学生が多く住むアパートなんて壁が薄くないわけがない。それを言い訳のひとつにしてこの数か月、部屋でベースを触ることは滅多になかった。だから久しぶりに爆音で好きにベースを弾けてたいそう楽しかった。 そうしてまざまざと突き付けられてしまう、自分が音楽を愛していることを。まだ楽器を始めたての頃にやったコピーも、気の向くまま引いた旋律に合わせたセッションもただ楽しい。そう、最初はずっとこんな気持ちだった。ただ一人で弾くよりも、だれかと合わせた方が楽しいし、嬉しい。気づけば持ち時間はあっという間に過ぎてしまう。 夕飯時はとうに過ぎた時間。けれど外は寒いし、なんだか名残惜しくて帰るのを渋りたい。その思考を見透かしたように併設されているカフェスペースに誘われるのに応じた。ホットの紅茶を啜る幸弥の対面では利央は機嫌よくロコモコ丼などを食している。……ここのフードのラストオーダーはもうとうに過ぎていたはずなのだが。しかしよくもまあ、この時間に食べる気になれる。 「お前、本当よく食べるねえ……」 「え、まあお腹すいたし」 半ば呆れたように言う。半分は感心しているのだけれど。きれいに完食してコーラで流し込むところはまあ、目をつぶるとする。こういうところがなかなか気持ちが良くて、自分もつい食べ物を与えてしまうのだから。 そこから取り留めもない話題に移行する。二年になってからはめっきり講義では顔を合わせなくなったから、なんとなくお互いの専門の話になる。来年はそういえば必修で同じ講義を受けれそうだがどうしようかなど、本当にそこまで実もない話をする。そういえば、こんな話でさえするのを避けていた。 少しでも気を抜けば、また不健全な方向に逸れてしまいそうで。甘さを含んだ指が毛先を弄ぶような戯れを仕掛けられたら、どう応えたらいいのか正直今は分からないのだ。 「……そういえば、お前どうすんの。法経ならやっぱ公務員講座、受けんの」 そんな中ふと漏らした疑問に、利央はあーだのうーんだのなんとも気のない返事をしながらストローをぐるぐるかき混ぜはじめる。ストローにくっついた細かい気泡がぷつぷつ浮かぶ。少しずつ速度を上げていくそれになんとなくバターになるぞ、とか言いそうになった。全然成分的にはそんなことはないのだが、色がちょっと。 少し冷めた紅茶にちびちびと口をつけながら窺い見ると、なんとも言えない顔でぐるぐる攪拌し続けている。なにがしたいんだこいつは。ガキでもあるまいし。 「……幸弥は、さ。もうやんないの、バンド」 手を止めて指を離せば慣性でストローはぐるぐるとコップの中で円を描きながら、炭酸に押し上げられて徐々に浮かび上がってやがて小さな飛沫をあげてテーブルに飛んだ。それを目で追って、視線を落として考え込む。 「やりたくないわけでは、ない」 ただ、本気でやるのは懲りた。そう言いたいのに、言えない。ベースを弾くのも、曲を作るのも好きだし俗っぽいことを言えば女の子に持て囃されるのも、嫌ではないのだ。けれど、好きという気持ちだけで走り抜けるのは正直きつい。 恋がそのまま結婚に結び付かないのと似ている気がする。気持ちだけで突っ走れるようなものではなくてけれど諦めるには未練が大きすぎて。気づいてみれば今年で二十歳だ。自分の気持ちひとつでなにかを決められる責任を負うことだって一応できる。けれど自分がその責に耐えられる自信がないことを、幸弥はよく分かっていた。 まだ学生という身分に甘えて、あと二年好き勝手やるか。それとも将来を見据えて修練を積むか。そのどちらかを選ぶ勇気が持てない。どちらも気持ち半分でできることではないと思っている。今はまだ学業を言い訳にしてちょうどいいペースを保てるけれど、大学だってこれからどんどん忙しくなる。どちらかを選ばなければならないのなら、あまり未練の残らない内に選び取るべきだ。自分の優柔不断さがほんとうに嫌になる。 「……そっか、まだ分かんないか」 見透かしたように利央が曖昧な笑みを浮かべる。鞄から煙草を取り出して、いい?と尋ねるのに頷きを返す。そういえば、こいつはもう誕生日を迎えていたんだったか。それにしたって意外だった。こいつがこんなものに手を出すなんて。 「なんとなーく、かっこいいでしょ。こういうの、ちょっと憧れてたんだよね」 どうせコンビニででも買ったのだろう安っぽいライターで火をつける。愁のようにジッポならそれこそかっこうもつくというのに。まあ、学生にとってはそんなもの宝の持ち腐れというやつだろうが。 あの時ははぐらかしたけれど、結局愁は幸弥になにを言いたかったのだろう。もう懲りただろうからやめておけ?そんなことを言いそうな気もするし、言わなそうな気もする。愁は結局なんだかよく分からない人だった。年上らしいしっかりしたところもあれば泥酔してゴミ捨て場で目覚めて財布を失くすことも少なくはなかったらしいし。 「……俺も、二月過ぎたらそーなんのかな」 「どうなるの?」 「酒で大失敗したり粗相したり?」 「どうだろ、だって幸弥そもそも羽目外すことなんてないじゃん」 知ったようなことを言いやがって、という気持ちがふつふつ沸く。少しだけ癪に障ったので利央の煙草を奪って吸ってやることにした。吸い方はなんとなく知っている、小さい頃から散々父親が吸っているところを見てきたのだから。親戚が集まればもくもくと煙が上がる、その中でお前はまだやらないのかとからかわれること散々。 色々と思い出すとイライラしてきた。フィルターに唇を触れさせて、なんでもないふりをしてそっと吸い込む。舌先にちりりと刺激が走って次いですっと冷たいメンソールが広がった。メンソは勃たなくなるとかよく言うけれど、こいつはそれでもこれを選んだのだろうか。 「いき、吸って。じゃないとちゃんと入んないよ」 どうしよう、すごくムカつく。対面の顔はセックスで余裕を失くした様子の幸弥に見せるのと同じような笑みを描いていた。言う言葉もまるで同じ。なんだか遊ばれているような気分だ。 ゆっくり深呼吸をするように、煙を肺に入れる。幼い頃から副流煙に満ちた環境にいたくせに少しだけ噎せた。なんだかかっこうが悪い。押し付けるように奪ったものを返すと、利央はなんだか場にそぐわないくらい穏やかに笑って見せた。 「幸弥にしては、悪いことしたんじゃない?」 「なんんだよその上から目線は」 悪いことってなんだ。一口煙草を吸っただけ、一口酒を飲んだだけ。罪の在処なんて誰にもはかれやしない。それに、自分はこんなことよりもっとはるかに「わるいこと」をしていたのだ。ほんの数か月前までもっと法に触れるすれすれのことをした。あれで捕まるのは向こうの方だけれど。未成年が性交するのは禁止だが結婚できるのは十八から、というこの国の法律の矛盾点を思う。それともあの法における未成年とは十八歳だったのだろうか。細かいことはよく覚えていない。 とにかく、目の前の同級生はこういちいち癇に障ることをしてくれる。たかだか数か月の差を見せびらかすようなやつではなかったはずだが。 「別に?上から目線なんて全然そんなつもりないし。あ、間接キスいただきます」 「……そんなのそれこそいまさらじゃん」 確か高校生の時はクラスマッチやら体育祭でスポドリを回し飲みしたような記憶があるし、そもそもそれ以上だってしている仲なのに。改めて思えばほんとうにどうしようもない。 「ねえ、幸弥」 「なに」 「オレは、幸弥はもうちょっとわがままになってもいいと思うよ」 分かったような口をきかないでほしい。ここ数年はやりたいようにやったつもりなのだから、それで幸弥自身が満足したというのなら、そういうことにしておいてほしい。一体こいつは自分をどうしたいのか。どうしたらこいつは満足するのか。 金のために身体を売ったらわけわからないくらい怒るし、そのくせ真っ当に生きようとすればそれを邪魔するようなことを言う。 煙草のにおいのうつった指が頬を掠めた。やめろ、そんな触れ方をするな。そんな風に、なりたいわけじゃない。 頬を滑った指が唇に触れる。下唇をなぞって、頤にたどりつくと軽く指で押し下げた。僅かに開いた唇にくちづけの予感を感じて、咄嗟に目を閉じる。夜も遅い時間とはいえ、公共の場でなにをしているのだろう。 予想に違わず触れた唇の感触。乾燥のせいか少しかさついていた。予想と違ったのは舌のひとつでも入って来るかと思っていたのにそんなことは全くなかったことだ。決して物足りないわけではない。物足りないわけではないけれど、しばらく触れ合っただけで離れていく唇に自分のそれは名残惜しそうに貼りつくようだったのが気に食わない。ただの水分量の差なのに。 「さすがちゃんと手入れしてるんだね」 「お前はちゃんとしろよ、そういうとこ」 せっかくモテるのに、というのはなんだか癪だから言わなかった。素材はいいのに変なところで手を抜くような男なのだ。黙って立っていればすぐに女子が寄ってくる。専攻の名前も相まって実直そう、引く手あまた。こんなのに捕まっている場合ではないのに。 「幸弥はそういう雰囲気になるとすぐ素直におとなしくなるところがかわいいよね」 流された方が楽だからそうしているだけにすぎない。そんなところをそういう風に評価されるの藩とも言えない気持ちになる。 「……俺はね、幸弥。幸弥のそういう優しいところが好きだけど、ただ幸弥の好きに生きてほしいだけなんだよ」 静かに落とされたそれに、何と答えていいのか分からなくて口を噤んだ。好きに生きるってどういうことなのだろう。 「幸弥が自分で決めたことなら、なにも文句は言わない。ただ、それだけだよ」 そこまで言って利央は席を立つ。そういえばこの県はたとえ十八歳を過ぎていても未成年の深夜はいかいは補導の対象になっているのだった。利央はともかく、幸弥はまだその対象だ。言いたいことだけ口にして言い逃げするところ、嫌いかもしれない。 戸を開けようと幸弥に背を向けた利央の背中に額を押し付ける。勢いづきすぎて半ば頭突きになってしまった気がしないでもないが、そんなことは知ったことではない。自分だけ言い逃げするこいつの方が悪いのだ。 「……幸弥?」 「――俺が、まだやりたいって言ったら。……お前は一緒にやってくれんの」 ひと呼吸分落ちた沈黙。微かに触れた背中が震えたような気がする。その表情はまったく読めないし見るのは怖い。 「……もちろん、そのつもりだよ」 それだけを口にして振り返ることもなく、利央は扉を開けた。支えを失って軽くバランスを崩してつんのめる。身を切るような冷たい風が一拍も置かない内に吹き込んできた。 「さっむ」 「んだからさ、これもう冬だべ」 「もうすぐ十二月だもんね……ってうわ、ちょっと幸弥さん見なよ雪だよ」 「うっそだあ、いくらなんでもはや、早くねえわ。そんなもんだったわ」 隣に並んで連れ立って歩く道はうっすら雪をかぶって白くなっている。空からもちらほらと雪が舞い降りてきていた。月は煌々と明るいが、雲の薄膜に阻まれている。  
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