笑顔の転機

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 兄と仲が悪くないことは、嫌いになっていないことは、良からぬことではなくて、良かったこと。  確かに、そうだ。 「管理人さん。僕、兄のこと『多分好きだった人』って言ったけど、『すごい好きだった人』に訂正します」  あぁなんか、心がくじけそうだ。  でも、好きだったと認めたら。  胸の痛みが、少し軽くなった気がする。 「僕、すごい好きだった人に彼氏を紹介されて、寂しい気分になってるんです」  管理人さんは僕の頭をポンポンと、手のひらで優しく叩いた。 「ここのアパートさ、個性的なお兄さんがたくさんいるでしょ? 寂しい気分、結構早く吹き飛びそうな気がしない?」  管理人さんの言葉は、いつも例外なく的を得ていて。 「はは、そうですね!」  この寂しさはすぐに解消されるのだろうと確信して、僕は返事をした。  久し振りに僕は、飾らない笑顔の表情を出せた気がする。  くじけそうな心が、くじけ切らずに、上を向く。  笑顔って、見るのも見せるのも、かなり意味のあることだなと改めて感じながら。  僕は管理人さんの次の質問に、ひととき前よりだいぶ晴れた気持ちで、再び回答を始めた。 了
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