1122人が本棚に入れています
本棚に追加
/659ページ
白なのか、銀なのか、きらきらと美しく光る毛並みと太いふさふさとした尻尾で、しゃがんでいる私の目線より頭の位置は高く見えた。
その犬が私の前に背を向け、立ちふさがるようにいるかと思ったら、振り向き私を見た。
凛々しい、そして水晶のような本当に綺麗な瞳が、私に立ち上がるように言っている。
私は頷き足を踏ん張って立ち上がると、その犬が私を見てから走り出した。
身体は重いし息がなかなか吸い込めないけど、必死に足を前に出してその犬の後ろを走る。
不思議とあの黒いモノが裂けるように分かれ、この子の後に走っていると真っ黒に染まりそうな私の身体が、少しずつ楽になってきた気がした。
走っている先に、突然カラーの風景が現れた。
あそこまで行けば。
だけど、だんだん息が上がってきて目の前が霞む。
良く見るとカラーの風景の中から人がこっちに来ているのがわかった。
きっと藤原が助けに来てくれたんだ。
もう少し、もう少しだけ。
私は必死に足がもつれそうになりながら走ると、突然正面から抱き留められた。
その人に強く抱きしめられながら私はその人の袖をぎゅっと掴み、記憶が途切れた。
最初のコメントを投稿しよう!