第五章 逢いたい人

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ふわりと、甘くて良い香りがする。 ゆっくりとゆっくりと、頭を撫でられている。 とても安心して、心地いい。 藤原が側にいるんだ、私を助けに来てくれたんだ。 やっと話しが出来る、藤原の声が聞ける。 私は早く顔が見たくて、まだ起きそうにない意識を必死に目覚めさせようとした。 「こらこら、無理して意識を起こさなくて良いんだよ」 聞こえた声に違和感を感じた。 これは、藤原の声じゃない。 私の意識がゆっくりと覚醒しだして、目を開けた。 「うーん、かえって起こしてしまったか、せめて声色を変えておくべきだったな」 起き上がろうとしたけど、身体が鉛のように重くて動かない。 顔だけゆっくり動かして声の聞こえる方を向いた。 そこには会いたかった藤原では無く、見知らぬ年配の男性がいた。 その男性の顔を見て、一気にあの夢のことを思いだす。 あの桜の木の下で出会った人が和服姿であぐらをかいて座って、私を困ったような顔で見下ろしている。 「無理に身体を起こしてはいけないよ、あれだけの穢れに触れたんだ。 でも声が出ないのは辛いね、ちょっと待ちなさい」 その人が優しく私の身体を起こしてくれた。
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