六章 仕立て屋と衣装決め

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  「も、申し訳ありません!」  リューティスの表情を見て即座に頭を下げたアグネスに、慌てて首を横に振る。 「少し驚いてしまっただけです。お気になさらないでください」  頭を下げたまま上げようとしない彼女に困り切って夫人をちらりと見ると、夫人は小さくため息をついた。 「座りなさい、アグネス」 「か、かしこまりました」  アグネスは夫人の命に従ってソファーに座り直した。リューティスは内心で安堵しつつ、ユリアスの隣に座り直す。 「注文は先ほど申し上げた通り、ユリアスの婚約式のドレスです。……こちらの布を使いなさい」  細長い木の箱を持った侍女が、アグネスの前で膝をつき、その箱を差し出した。 「ありがとうございます。確認させていただきます」  アグネスはそれを受け取って己の膝の上に乗せると、ゆっくりと丁寧な手つきで蓋を外した。アグネスは薄緑色の布をじっと見つめていたが、その表情が徐々に真剣なものに変化していく。 「上質な黒曜蜘蛛絹……。これは南の国特有の染め色ですね」  布を見ただけでそこまでわかるとは、さすがは本職の仕立て屋、それも公爵家の御用達の職人である。 「えぇ。リューティス様からユリアスへの贈り物ですわ。」 「左様でございましたか。お嬢様の御髪の色と同じですね」 「そうでしょう?」  夫人がこちらを一瞥した。顔に熱が集まるのを感じて目をそらす。少々気恥ずかしい。 .
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