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「──今日もありがとう」
「おう、こっちこそありがとな」
緑の髪の少年に突き出された拳に、己の拳をぶつける。クレーネーより少々背の高い彼は、中央の国首都で活躍するパーティー、琥珀のリーダーであるジェイソンだ。年齢はクレーネーと同じく十一歳だ。
しかし、この歳にして、Dランクの冒険者だ。クレーネーもDランクになったばかりだが、それは師匠に鍛えてもらい、付き添ってもらいながらランクを上げてきたからであり、一人だったらこれほど早くランクを上げることなどできなかっただろう。
「クレーネー、やっぱ強いな」
「そんなことない」
首を横に振って否定する。
クレーネーは未だに師匠に対して一撃も食らわせたことがない。それは、師匠が最強の名を背負う人物であるからだが、剣先がかすったことすらないのだ。当たり前のことなのかもしれないが、あれだけ手加減されていてなお、まったく攻撃が当たらないのである。
「なぁ、クレーネー、このまま俺らのパーティーに入る気はないのか?」
琥珀のパーティーメンバーの一人である長い赤い髪を一つに縛った少年──エイルに訊ねられ、苦笑いした。彼はパーティーの中で一番年上で、十二歳だと聞いている。
そういってもらえることは嬉しいが、学園に合格したら、毎日朝からギルドで依頼を受けることはできなくなる。休日は朝から依頼を受けるつもりではいるが、週二回の頻度で参加をするだけになってしまう。
「ごめん。学園合格したら毎日依頼受けられないから」
「俺はそれでもいいんだけど」
「俺も別にそれでいいんだけどな」
エイルとジェイソンは口々に了承して笑った。
「なんでそんなに遠慮するの」
パーティーの紅一点である茶髪に緑色の瞳の小柄な少女──シェリーが唇を尖らせた。彼女はこのパーティーで唯一の魔法師でもある。水属性を得意とするクレーネーとは異なり、風属性魔法を操る攻撃魔法師だ。
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