25053人が本棚に入れています
本棚に追加
/2323ページ
「ちょっと話がある。依頼の手続きが終わったら俺のところに来て。その辺で立ってるから」
「わ、わかった……」
驚きのあまり、怒りがどこかに吹き飛んでしまっていたのだが、ローザンが目の前から退いてあの少年の姿が目に入ると、再び熱い感情が湧き上がってきた。
しかし、座り込んだ少年の周囲に広がる水たまりと情けなけなく嗚咽を上げて泣くその姿を見ると、急激にどうでもよくなってしまった。
こんなくだらない奴になぜ師匠が馬鹿にされなければならないのか。この少年の思考力があまりにもなくて、師匠の正しい評価ができないのだと思うと、この少年と関わる時間さえもったいなくなってしまった。
水たまりから目をそらす。泣きじゃくる少年に近づく者はいない。少年と同じパーティーを組んでいるらしい師匠の弟が近づこうとしたが、その隣で成り行きを見ていた少女が師匠の弟を止めた。
「自業自得だよ」
「で、でも……」
「ライ君が助ける必要なんてない」
少女はきっぱりと言い切った。クレーネーも少女の言葉に同感だ。
「そうだよ」
クレーネーが同意の言葉を投げかけると、師匠の弟──ライは振り返った。その顔には困惑が浮かんでいた。
「でも……」
「いいから! 行くよ!」
少女がライの手を引き、前に進ませた。受付から続く列はこうしている間にも短くなっていて、ライと少女の前には二人分ほどの間ができてしまっていたのだ。
クレーネーは水たまりをよけて前に進んだ。エイルもジェイソンもシェリーも黙ってついてくる。
.
最初のコメントを投稿しよう!