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あの少年から少し離れたところで、エイルが口を開いた。
「な、なあ。あの人、ギルド“月の光”の零番隊副隊長だろ?」
「あー、うん。師匠の友達なんだ」
それが表向きの関係であると知っての答えだ。
「“雪妖精”……、ほんとにすごいんだな」
「うん!」
クレーネーは笑顔でうなずいたのだった。
その後、依頼達成の手続きを終えてから、ローザンのもとに駆け寄った。ギルド内はとても混雑していたが、彼の周りには不自然な空間ができており、誰も彼に近づこうとしないのだ。
「ローザンさん、お待たせしました」
「いや、……もういいのか?」
「うん、大丈夫」
「そうか」
この人はいつも笑みを浮かべている。未だに座り込んで泣きわめいているあの少年に対して、先ほどどのような表情を浮かべていたのか見えなかったが、少なくともクレーネーの方を振り返ったときは笑顔だった。
クレーネーはこの人の笑顔を恐ろしく感じている。笑顔の下に何を思っているのか全く読めないからだ。
だが、この人は少なくとも師匠の敵ではなく、おそらくは絶対的な味方であるし、クレーネーが師匠を裏切るようなことをしなければ、クレーネーにとっても味方であろう。
だからこそ、恐れることはしない。師匠の身に何かあったらすぐにこの人に念話を繋ぐし、定期的に師匠の様子を報告している。
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