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「それで、だ。頼みがあるんだが」
「うん」
ただの話であったら、この人の方から念話が来ていただろう。しかし、この人はわざわざクレーネーに会いに来たのだ。何かよほどの理由があるのだろう。
ローザンは少しだけ眉根にしわを寄せて、かがみこんだ。クレーネーの耳に口を近づける。
「……あのお方の婚約式に、零番隊の面々を招待してもらえるように、どうにかしてくれないか?」
クレーネーはきょとんとした。
「え、師匠、招待しないの?」
「あ、いや、たぶん俺は呼んでもらえると思うが、他の面々がな」
「あー」
ローザンは表向き師匠の友人である。表向きの理由があるのだから、師匠はこの人を招待するだろう。だが、零番隊の他の隊員たちのほとんどは、師匠と個人的な繋がりを持っていないのではないだろうか。
少なくとも、師匠と個人的なかかわりを持っていることをクレーネーが知っている隊員は、師匠の本当の友人のレイトと、弥生くらいだ*。
「おれが言っても、師匠、聞いてくれるかわかんないけど」
「それでもいい。……あいつらがうるさくてな。悪いな」
「え、あ、ううん。……その、さっきはありがと」
クレーネーは首を横に振り、ついでに礼を告げた。
「あぁ、あれはただ単に俺があの阿呆を許せなかっただけだ。あの阿呆に関しては“月の光”に報告をしておく。また何かあったら俺に連絡しろ」
「わかった」
クレーネーは深く頷いた。
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*クレーネーは弥生が正確には零番隊隊員ではないことを知りません。
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