七章 家庭教師

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  「今日はどうなさったのですか?」 「手が空きましたので隊の様子を見に伺っただけです。問題はありませんか」 「特に変わったことはありません」 「そうですか」  先ほど他の隊員から聞いたとはいえ、副隊長であるローザンの口から聞くと安心するのだ。  ローザンと共に戻ってきた隊員たちの中に紺色の髪を見つけて話しかける。 「ロルフ」 「っはい!」  名前を呼ぶと彼は姿勢を正して敬礼をした。リューティスは敬礼を返してすぐに手を下ろす。 「楽にしてください。……巧」  訓練部屋の奥の方で一人魔法の鍛錬を行っていた巧を呼んだ。彼はリューティスが名前を呼ぶとすぐにかけてくる。 「お呼びですか?」 「先ほどの件です」  巧ははっとした表情でロルフに視線を向けた。 「ロルフ、ご存知もしれませんが、巧がニアンを受験することになりました。時間があるときで構いませんので、少々勉学を教えていただけますでしょうか」  彼はきょとんとした顔で巧を見て、数秒の間をあけてうなずく。 「巧なら構いませんよ」  その言葉の裏には、勉学を教えたくない相手もいるという本音が見え隠れしていた。 「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」 「お願いします!」  とはいえ、巧には問題なく教えてくれるようだ。リューティスは安堵する。  巧は笑顔を浮かべてロルフに敬礼をした。ロルフは微笑し、一度だけうなずいた。 .
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